研究内容

感染症インテリジェンス機能 

 

₍1₎ TCIDEAの感染症リスクマネジメント 

 

2019年12月に中国武漢市で原因不明の肺炎が集団発生した時、世界的なパンデミックを想定した感染症危機管理体制に切り替える視点が必要だったことは明らかです。 

 

このため、TCIDEAは、インシデント・コマンドシステムの考え方を取り入れた学内体制の構築とともに、サーベイランス、国内外の情報の収集、分析、評価及び対応といったリスクマネジメントにより、「有事」を早期に判断するための準備を進めております。 

 

リスクの把握、分析、評価及び対応といったプロセスは、TCIDEAの基礎医学部門であるハイリスク感染症研究マネジメント学分野による迅速な病原体の特定、対応の具現化と連動して実施します。 

 

また、リスクマネジメントの精度を高め、より有効なものとするため、積極的に関係機関とのネットワークづくりに努めております。 

 

有事に切り替えた後は、当該ウイルスに関する膨大な情報のリスクマネジメントを適切に継続して実施します。 

 

その際は、ハイリスク感染症研究マネジメント学分野による病原体ゲノム解析データや、臨床医学部門である統合臨床感染症学分野における感染症診療・制御データのマネジメントとともに、TCIDEA全体で進めてまいります。 

 

そして、平時に培ったネットワークを活用し、迅速な診療、検査法確立、ワクチン開発にも貢献したいと考えております。 

 

 

(2)感染症疫学情報レファレンスの運営 

  

前項で述べた、リスクマネジメントを適切に進められるよう、TCIDEAは、感染症疫学情報アーカイブ(T-AIDEを運営しています。 

 

引き続き新興感染症等の発生や流行の恐れが想定される中、感染症の疫学情報を早期に探知し、リスク評価に基づく初期対応を行うことが重要です。T-AIDEは、その情報源であり、IDEAを提供してまいります。 

 

T-AIDEは、主に医療関連施設や行政等の関係機関における感染症対策担当者を対象に、作成しています。TCIDEAの視点でメディアやサーベイランス情報等を収集し、様々な分野で評価・分析に活用していただければ幸いです。 

 

今後は、学内外の関係機関と情報を共有し、意見交換やコメントの掲載をする場となる等、皆様からのご指導を承りながら適宜更新してまいります。 

 

 

パンデミックを想定した感染症危機管理体制 

 

(1)新型コロナウイルス感染症対応の研究 

  

新型コロナウイルス感染症への対応を通じ、私たちは、平時からの感染症危機に備えた体制の整備、予測できない事態への対応力の強化、ウイルスの病原性や感染性の変化への想定と柔軟な対応、情報管理等の重要性等を強く認識しました。 

 

そのためまず、新型コロナウイルス感染症対応についての研究を進めております。 

 

2019年12月以降、中国武漢市で原因不明の肺炎が集団発生し、翌年1月に日本国内で武漢市に滞在歴がある新型コロナウイルス感染症の1例目が報告されました。 

その後2023年5月に新型コロナウイルス感染症が5類感染症に分類されるまでの状況について、オープンデータに基づき研究しています。

 

(2)新たなパンデミックを想定した研究 

 

新型コロナウイルス感染症の発生前における備えは、新型インフルエンザを前提に行われており、短期間で変異を繰り返し、対応を長期化させるウイルスを想定したものではありませんでした。 

 

そのため、新型コロナウイルス以外の新たな呼吸器感染症等が流行する可能性を想定し、ウイルスの病原性や感染性に着目するなど、より豊かな着想により感染症危機管理体制に関する研究を発展していきます。 

 

 

持続可能な感染症危機管理の体系化 

 

感染症危機管理は、平時の準備、待機、有事(危機発生時)の対応、対応への評価と対策の追加を繰り返し行う必要があります。 

 

平時に、最悪の事態を想定した備えを行い、災害対応を参考に、人材、物資や構造設備を整備し、図上訓練や情報訓練などにより、更新しながらその体制を維持しつつ、いつでも対応できるよう待機します。 

 

有事(危機発生時)には、未知の脅威に対し、まず備えを行動に移します。不測の事態により、備えの効力が足りなければ、情報を収集、分析し、新たな対策を講じます。 

 

そして、危機が一旦弱まる、過ぎ去った時に危機時の対応を総括・検証します。長期間にわたる場合は、フェーズごとの分析、評価による対策の変更が重要です。そして、次なる危機に備え準備し、対応します。 

 

こうした、感染症危機管理は、実施主体により異なります。それぞれの取組が重なり合って初めて持続可能なモデルが形成されていきます。それらを体系化させることが重要であり、その研究を進めております。